こんにちは、ゆとり主婦のマリー(@yutori_shuhu)です。
今年、私は奨学金の返還=返済を17年余りかけて終えました。
最後の1年は思い切って繰り上げ返済。
肩の荷がおりると、ふっと母の顔が思い浮かんで「おかげさまで奨学金を返し終えたよ。ありがとう」とLINEを送りました。

返し終わってみて、アラフォーの私が今、考えていること。
そして18歳の私が知らなかったことを、当時の私に向けて手紙として書きます。
個人的な体験だから、もしかしたら誰の参考にもならないかもしれない。
それでも、あの頃の自分に向けて、思いを伝えてみようと思います。
Contents
18歳の私へ 無理して東京の私大へ進学するよ
18歳の私へ。
あなたは、とにかく東京へ行きたいと、それだけを思っているよね。
あなたは本が大好きで、出版社がたくさんある東京に、小学生の頃から憧れを抱いていたよね。
東京に住んでみたくて仕方がないんだよね。

本と絵を描くことが大好きで、数学が苦手。
お金の勘定も家計の状況もわかっていないよね。
0点を取るくらい数学が苦手なあなたは、東京の国公立で入れそうな大学はない。
親に無理を言って私大の文学部を受験する。
進学塾に通うお金もないけれど、なんとか受かるよ。
受かるけど、いいことだけじゃない。
貧しくはないけれど裕福でもなかったあなたの家では、あなたの妹へ学費をかけられなくなる。
何年か後、妹からその恨みを告げられてあなたは動揺するけれど、しっかり受け止めてね。恩恵を受けた分、その責任があるよ。
奨学金ではなくてローンだよ
親からの仕送りだけでは厳しく、あなたは親と相談して奨学金を借りることにするんだ。
日本育英会(現:日本学生支援機構JASSO)の利息が付く第二種・貸与型の奨学金「きぼう21プラン」を月5万円で申請。

あなたは「奨学金」という言葉に何の疑問も抱かなかないけれど、それは実質「奨学金」ではなくローンなんだ。
つまり、利息のついた借金なんだよね。
このプランの借用利率は上限3%だよ。3%ってすごいんだよ。「複利」についてgoogleで調べてごらんよ。
結局、どのくらいの利子額になるのか、わからないまま契約するよね。
このプランでは卒業する年に借用利率が決まる制度だったから、4年生の7月にその返還条件通知が届くよ。
その条件によると、利率は0.85%で確定される。
3%じゃなくて安心するところだけど、あなたはそこも大して確認しない楽観主義者だよ。大学4年間じゃ変わらないもんだ。
返還回数は180回。総額の返済額は257万円だよ。
つまり利息は17万円くらいなんだ。
あなたはこれを安いと思う?高いと思う?
大学の授業に価値を感じられなくなるよ
ひとまず、奨学金のおかげで憧れの東京生活が始まるよ。
毎月5万円の奨学金と、親からの仕送りと、アルバイト代。
下北沢で古着を買い、ときには茹でたもやしをポン酢で食べて節約しながらおしゃれを楽しむような、ありきたりな学生生活だ。恵まれているよね。
大学の授業は、正直いって期待したものではなく、がっかりすることが多いだろう。
文学部だからか、授業を受け持つ講師や教授の好みが内容に強く反映される。
講師が研究している作家を、学生にも研究させる。
だから、自分の興味がない作家の作品を全部読むことになる。
大学の仕組みをよく知らずに入学したからガッカリしてしまうんだよね。
そもそも、あなたが研究したい分野を研究している教授がいる大学を目指さなければならないんだ。
まあ、一方で映画論や心理学、パソコンの授業など予定外に面白い授業と出会えるから、落ち込まないでよね。
東京では刺激があり、様々な経験も積め、出会いもある。
それ以上に、何者でもない田舎から上京した普通の女の子のあなたは、孤独や劣等感や焦燥感と戦うことになる。
1番辛いのは「就職活動」だよ。

あなたの世代は、ちょうど就職氷河期の最底辺で、就職が決まらないから覚悟しておいて。
100社エントリーシートを出しても筆記試験に進めるのは50社以下、面接に進めるのは10社、最終の役員面接(4次面接)まで進むのはたったの1社。
そこも、もれなく落ちるよ。
とりあえず卒論を提出して無事に卒業はするけれど、あなたは精神的に傷つき、疲れ切ってしまう。
この年は、就職氷河期の中で最も厳しい年で、結果として新卒の就職率は50%代に留まる。
経済的に余裕がある同級生たちは就職浪人を決めている。
あなたはそんなことも知らずに、自分だけがすべてを否定された気分になって、大学に入れてもらったのに就職できなかったことを、親に申し訳なく思うことになる。
親に買ってもらった就活用のスーツを見るのが、辛くてたまらなくなる。
借金240万円&非正規雇用で社会人スタート
あなたの社会人生活は、4年間の奨学金=借金240万円(利子込みで257万円)を抱えてのスタートになる。
就職が決まらず、仕方なく派遣社員として働き始めることになるよ。
バブル世代の男性の課長に「〇〇さんは、大卒なのになんで派遣社員やっているの?アフターファイブは歌舞伎町で踊っているとか?派遣の人って不思議でしょうがないよ」とまじめな顔で言われて返す言葉もなく苦笑いするよ。

社員ではないから新卒研修もなく、実務経験がないあなたは、自分で調べて社会人のマナーや実務的なスキルを覚えていく。
苦労することも多かったけれど、助けてくれる先輩女性もいる。
それに、学生時代にパソコンやネットが好きだったことや、たくさんアルバイトしてきた経験が助けになるから安心して。
問題は、ボーナスもなく、出勤した日数分しか給料がでない派遣という雇用形態。
連休がある月は手取りが数万円下がるから、レジャーどころじゃないよ。
奨学金の返済額は毎月1万50000円弱。
少ない手取りで一人暮らしをしていると、毎月27日にゆうちょの通帳に印字されるこの引き落とし金額を何度も恨めしく眺めることになる。
正社員で仕事がきまった友人たちは、年収で100万円近くも違ったから、会うのもためらってしまうんだよね。
まあ、当時はあなたと同じで就職が決まらなかった同級生も多いんだけどね。
中年になって、ついに返還が終わるよ
それからあなたはスキルアップして正社員として転職したり、田舎にUターンしたり、結婚したり、うつ病になったり、離職したりと、人生のさまざまな波にもまれるよ。
いい時も悪い時も、日本育英会に住所の変更をちゃんと届けて、返済も続けて、ついにあと1年で支払いが終わる時期を迎える。
そこで、1年だけでも繰り上げ返済をする決断をする。
1カ月でも早く、肩の荷を下ろしたいからだよ。
そうして返済が終わったのが、今の私だよ。
きつかったけれども、振り返るとやっぱり大学に進学して東京で暮らせて、良かったと思えるんだ。
だから「奨学金を借りてまで大学に行くな」なんて言えない。
なんだかんだ言って、転職するたびに「大卒で一定の評価がある」と実感する。個人的にはそんなの古いし、ナンセンスな部分も大きいと思う。
でも現実的には、まだまだ大卒からの採用や大卒の給与設定などあるんだよね。
何よりも、今、これまでの人生の中で1番幸せを感じているから、過去のあの時に奨学金を借りない=大学には進学しない(もしくは東京には出ない)という別の選択をしていたら、今以上に幸せになっていたかどうか自信がない。
だから、仕送りを続けてくれた両親と、奨学金を借りて進学したあなたに感謝したい。
あなたはぼうっとしていて夢見がちで、お金が貯まらない性分だけれど、幸せになるから安心していいよ。ありがとうね。
奨学金を借りる18歳のあなたに覚えておいてほしいこと
奨学金は借りてもいい。
ただし、計算してその重みを分かった上で「それでも借りたい」と思えたら借りること。
返済するのは、誰でもないあなただよ。
他に手段はない?
無利子の奨学金や、返還義務のない奨学金はない?
親戚から無利子で借りられない?
そもそも大学に行かなくてもあなたの人生は豊かであるかもしれないよ?
奨学金を借りなかった場合の選択肢も十分に吟味すること。
その先の人生がどう違うのかシミュレーションすること。
それが自分の人生の舵取りをすることになるよ。
もし借りることになったら・・・返す道のりは正直言って長い。
毎月の引き落としがうっとおしくなった時は、あなたが返済した利子が後輩たちの奨学金になり、社会に役立っていると信じよう。
そして、寄付しているくらいの気持ちで、ゆっくり返済していこう。
必ずやり遂げられるから、くじけないで。応援しているよ!
~奨学金の返済が終わったおばさんより~